2015年 12月 11日
佐保会兵庫読書会 |
第14回佐保会兵庫読書会を10月29日(木)クリスタルタワーにて、午後1−4時開催した。
久しぶりの会で参加者は、7名
今回は、中垣俊之著 ”粘菌、偉大なる単細胞が人類を救う”(文春新書)を合評した。1年前の出版である。
ひさしぶりに社会問題とかけ離れた科学の分野の本を取り上げた。
粘菌は、肉眼では見えないアメーバという単細胞世代から、肉眼で観察出来る多細胞の集合体をへて、さらに子実体という構造物を形成する生物である。生物学の分野では、短期間に単細胞から多細胞へ進化するので興味の持たれている生物である。著者は、粘菌の単細胞、つまりアメーバの集合体の挙動を研究し、イグ ノーベル賞を2回受賞している。アメーバの研究でこの賞の「認知科学賞」を受けているところにユニークさがあり、スピーチにユーモアが不可欠というイグ ノーベル賞を紹介している。
アメーバの集合体が、迷路を出発点からえさのある終点へ、最短距離で到達するという不思議な現象を研究対象としている。脳も神経もない単細胞がなぜこのような機能を持っているのかを論じていて、さらにこれらの集合体の挙動をヒトの行動とむすびつけて論じている。例えば集団になると個体とは別の性質をもって行動するという知見は、人間の組織に通じるものがあり興味深い。
専門的なところは、理解しにくかったが、後半に述べられている著者の未知の分野に挑む姿勢や、好奇心についての話は印象深かった。また学ぶこと、研究することは、人間にとってどのような幸福をもたらすのか、著者自身の体験を通して語られていて好感が持てた。人間生きている限り末長く著者のような好奇心をもって生を全う出来たら幸せだろうと思う。
今回は、参加者が印象に残ったという以下の本が紹介された。
上瀬英彦著 ”何を食べ何を食べない食と健康の哲学”(ルネッサンス アイ)、阿部絢子著 ”老いのかたづけ力”(大和書房)、幸田文著 ”きもの”(新著文庫)、水村美苗著 ”本格小説”(新潮文庫)。
なお、次回第15回佐保会兵庫読書会は、伊藤ひとみ著 ”キラキラネームの大研究”(新潮新書)を合評します。
著者の伊藤ひとみ氏は、母校、生物学科のご出身です。
日時:平成28年1月28日(木)午後1−4時
場所:JR神戸駅前、クリスタルタワー5階、ブース 5
佐保会兵庫支部の読書好きのみなさま、一緒におしゃべりを楽しみませんか。
無料です。お待ちしております。 生物学科、昭和39年卒 長田久美子記
by ku-nagata
| 2015-12-11 15:37