第26回佐保会兵庫読書会 |
第26回佐保会兵庫読書会を開催した
日時:平成30年11月29日(木)午後1−4時
場所:JR神戸駅前、クリスタルタワー、5階、ブース”5”
川島博之著、戸籍アパルトヘイト国家、中国の崩壊(講談社+α新書) ベストセラー。 10月'17の出版を、合評した。今回は、9名の参加者。
この本は、現在、習近平の率いる中国の政治情勢について述べている。
新しい知識が得られた。
まず中国の人口構成について。 13億の人口のうち、都会に住んでいる人は4億、農村の人口は9億であること。 都市と農村では"人種"が異なる。
つまり、戸籍が農村であると、都市の学校に入れない、また簡単には都市に住めない。戸籍で農民としての身分が決まる。 農民がたとえ都市に住んでも、下積みの職しかつけない。その人たちを中国では"農民工" と呼んでいて、いわゆるブラック企業で働く。都市に4億人くらい住んでいる彼らは、戸籍アパルトヘイトであり、農民は、一生この人種の違いから抜け出せない。
このような安い賃金で働く農民工、約4億人の体制が中国の経済の発展を支えてきた。都市の市民4億人は、彼らのおかげで上位のポストにつけ多額の賃金を得て裕福な生活をしてきた。つまり都市市民が、農民工を搾取してきた。農民と都市市民の所得の格差は、数倍以上になり、農民の7割は極貧に近い。ちなみに日本に観光に来るのは、都市市民の一部である。また、政府は農民から、土地の使用権(中国では土地の所有権は認められていない)を買い上げその際の汚職が蔓延しているという。
しかし、近年農民工が政府に不満を示し、賃金を上げざるを得なくなっている。その結果、外国資本が撤退し始め、中国経済にかげりが見えてきた。
また、今までの好景気から不動産などに投資してきた都市市民は、バブルがはじけ財政難をきたしている。
習近平は、国内での不満を外部に向けるため、外交問題に目を向けている。
尖閣諸島、一帯一路、アフリカへの進出、アメリカとの貿易摩擦など。
また、防衛費を増額して、数々の戦闘機を充実させて財政を圧迫している。
著者は、このような無理を強いうる政策は、第二次世界大戦を引き起こした日本の事情に類似しているという。
従って習近平は、国内に目を向けるべきである、と述べている。将来、国内での不満から習近平が失脚し、中国が崩壊する可能性があるという。
なおこの本では、なぜ中国がこんなに人口が多いのかを解説している。
中国は、表意文字(漢字)を使う。表音文字と違い、話せなくても筆談で意思が通じる。 漢字を使うことで多くの人が同じ民族になりえた。
また米と麦を食べる民族の違いについて。中国は、南に位置する長江と北に位置する黄河がある。南では米を、北では麦を耕作した。米農作には“水の灌漑”が必要であり、農作民の互いの協力がいる。つまり農民同士が協力し合うという日本社会に類似するが、麦の栽培には雨水で十分であり、協力が必要なく個人主義を維持出来る。また北方民族は騎馬民族に近く戦闘的である。
さらに日本では、武士道が、ヨーロッパでは騎士道があり、市民の道徳や倫理の要として発達してきたが、中国にはそう言ったものがない。 最近中国の科学者によってエイズウイルスの感染を防ぐために、ヒトの受精卵の遺伝子を操作して双子の赤ちゃんが生まれた、という事がネットで紹介された。生命倫理として問題である出来事で中国人の倫理観が疑われている。
なお参加者から奈良女子大学から調査に行った、中国少数民族の新疆ウイグル地区の視察についての経験談が話され、イスラムを信じ、食べ物が異なり漢字を理解しない民族へ、漢民が差別するなどの実態が紹介された。
現在、日本で異民族の受け入れについて議論されている。我々も異民族に対して今後どのように付き合っていくか難しい問題である。
次回
日時:平成31年1月31日(木)午後1−4時
場所:JR神戸駅前、クリスタルタワー、5階、ブース”5”
合評する本:和田秀樹著「自分が高齢になるということ」新講社
その他に次回に引き継いで、母校奈良女も関わってくる可能生のある「LGBT」について、関連の本や雑誌などを紹介しあって、この問題について話し合う。
会費は無料です。気楽なおしゃべりを楽しみませんか。
39 年植物卒 長田久美子 44年英文卒 松本佳代子